日本は少子高齢化社会がすすみ、年金不安による老後不安に拍車がかかっています。老後の生活費の蓄えのためにも計画的に老後資産形成をする必要性が高まるばかりです。
加えて、昨今の加速度的な円安により生活にも影響が出始めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
円安においても計画的に老後資産形成をしていくためには、国の制度であるNISAやiDecoを活用する方法が効果的です。
目次
円安とは日本円の価値が下がっている状況
2022年12月現在、アメリカの政策金利の利上げの影響で円安がすすみ、日本経済に大きな影響を及ぼしています。そもそも円安とは日本円の価値が下がっている状況で、一方円高とは日本円の価値が上がっている状況です。
円安や円高は政治的な要因や経済的な要因により、外国為替市場で日本円の需給が変化することにより価値が変動します。為替は国の力を表すといわれています。日本円の需要が少なくなることで円安となり、円安は日本の国力が低下していることを表しています。
我々が円安によって影響を受けるメリットとデメリットを解説します。
出典:日本銀行「円高、円安とは何ですか?」
円安から得られるメリット
・日本製品が売れやすくなる
・外貨資産を既に持っている場合は売却で利益を上げられる
外貨で資産形成をしているケースでは、通常の投資効果に加え円安により為替益を得ることができます。既に持っている外国株式で株価が下がって含み損がある場合でも、為替益により資産が増えていることがあるのです。
また、円安により輸出企業の売り上げが上昇します。日本の主な産業である自動車メーカーの売り上げや利益は、大いに為替の影響を受けます。円安の状況下では輸出企業の株価が上昇する傾向にあります。
円安から受けるデメリット
・輸入品が高くなる
・石油(光熱費)や食料など、私生活への影響
円安になると輸入品が高くなります。日本の自給率は低く、ガソリンや食料品など多くの生活必需品を輸入に頼っています。輸入品が高くなるということは、生活必需品を中心とした物価が上昇するため、国民の生活を圧迫します。
また、海外旅行で掛かる交通費や現地での食費などが上がるため、いままで物価が安いことで人気があった東南アジアへの旅行でもお得感を感じることが少なくなるでしょう。
NISAの制度とは?|小額から利用できる積立投資信託
NISAとは、少額投資非課税制度の税制優遇のことを指します。
通常、投資で得た利益に対して一律20.315%税金が掛かりますが、NISAを利用すると定められた投資額を上限に、投資で得た収益を非課税で受け取ることができる制度です。
NISAには一般NISA、積立NISA、ジュニアNISAという3種類の制度があり、定められた投資額の上限や投資の期間などに相違点があります。
現行のNISAは期間限定の制度ですが、日本政府の経済対策の一環でNISAの恒久化を打ち出していることもあり、今後もNISAは注目を集めることでしょう。
出典:金融庁 公式サイト NISAとは?
iDeCoとは?|投資で積み立てるもう一つの年金
iDecoとは、個人型確定拠出年金の愛称です。国の年金制度は、国民年金がベースとなっており、職業に応じて厚生年金が上乗せされています。
さらに年金制度として上乗せができる制度が、確定拠出年金です。確定拠出年金は企業型と個人型に分かれていますが、個人型の確定拠出年金は自分で老後資産形成ができる年金制度です。
個人型確定拠出年金で拠出した資金は、所得控除の対象となるため税制優遇が受けられます。また、年金で受け取る場合や退職一時金として受け取る場合でも所得控除の対象となるため税制優遇を受けることができます。
出典:厚生労働省 公式サイト iDeCoの概要
円安がNISAやiDeCoに与える影響
国も現行の年金制度だけでは国民の年金が準備できないため、NISAやiDecoといった年金制度で少しでも自助努力をして年金を準備するようにすすめています。
NISAやiDecoは老後資産形成のために有効な手段です。ただ、このような円安の経済環境ではNISAやiDecoにどのような影響を与えるのでしょうか。
円安がNISAに与える影響
・外貨建て資産の価値が上がる
・国内資産のみ保有している場合は円安の影響をそのまま受ける
・資産を分散して所持することがリスクヘッジになる
NISAを利用して投資をしている方であれば主に株式やETFに投資をしているでしょう。日本国内の株式やETFであれば円安の影響を受けませんが、外国株式やETFであれば円安の影響を受けます。円安の状況であれば、外国株式やETFの円建ての価値は上昇します。
NISAは期間限定の税制優遇であるため、期間中のある時点で利益を確定させなければ税制優遇の意味がありません。これ以上の円安がすすまないという判断をした時点で利益を確定させるために外国株式やETFの売却を検討しましょう。
円安がiDecoに与える影響
・積立投資は長期運用が前提となる
・長期運用をすると損益が平均化されると言われている
iDecoを利用して資産形成している方であれば運用管理会社が用意する投資信託で資産形成しているでしょう。
日本国内の金融商品を取り扱った投資信託であれば円安の影響を受けませんが、外国の金融商品を取り扱った投資信託であれば円安の影響を受けます。
円安の状況であれば、外国の金融商品を取り扱った投資信託の円建ての価値は上昇します。iDecoは60歳になるまで引き出しができないため、利益を確定させるためにはiDeco口座内で他の投資信託にスイッチングをする必要があります。これ以上円安がすすまないという判断であれば、掛金の配分割合や資産残高の割合を見直す必要があります。
円安時にはNISAやiDeCoをやめるべき?
・税制優遇がある
・積み立てることが大切
加速度的な円安により外貨で資産形成をしている方であれば為替益が得られています。
しかし、これ以上円安になるかはわかりません。歴史的な円安はこれ以上続かないと思われる方の中にはNISAやiDecoをやめてしまおうか検討されている方もいらっしゃるでしょう。
資産形成のためにNISAやiDecoが有効であることに変わりはありません。歴史的な円安だったとしても、今後継続してNISAやiDecoを利用したい理由を解説します。
・これからも継続して世界経済は成長する
・円安下は外貨建て資産の円建ての価値が高まる
・積立投資をすることによって円高下では安く金融商品が買える
資産形成をする上でリスクを回避する手段として積立投資があります。積立投資とは、価格が変動する金融商品を定期的に決まった金額で機械的に投資をする方法です。
積立投資の本質は、まとまった資産を形成するために、長期間にわたり積立投資をすることで効率的に資産形成をすることです。為替や価格の変動で一喜一憂することなく、粛々と機械的に積立投資をすることが資産形成には有効です。積立投資の税制優遇のあるNISAやiDecoを利用しない手はありません。
まとめ
日本はこれから益々少子高齢化社会がすすむことが見込まれています。医療費の自己負担は増え、受給年金額も減る一方です。変化が厳しい世の中において、今後日本がどうなっていくかも不透明な中、自助努力で老後の蓄えをする必要性は高まるばかりです。
自助努力で資産形成するためには投資をする必要がありますが、投資にリスクがあることも事実です。
つみたてNISAやiDecoを活用した積立投資は、税制優遇を受けながら投資のリスクも回避でき、長期にわたる老後資産形成には有効な手段だと言えます。